旅行業界の国家資格となる「総合旅行業務取扱管理者」。この試験の合格への近道となるのが、旅行業界に在籍している人だけが受ける事が出来る「総合旅行業務取扱管理者研修」についてご紹介していきたいと思います。
そして、管理者研修の概要と修了テストの難易度についてもご紹介していきます。
【概要】総合旅行業務取扱管理者とは
簡単にいうと、旅行業の国家資格です。
各事業所に1名以上必要で、、、、、と運営上のお話も色々とありますが、取得すると現職中の給料UPや、再就職時に有利になったりと、取得するメリットは大きいです。
他にも、「国内旅行業務取扱管理者」というものもありますが、細かい話を省略すると、こちらの資格は国内旅行のみを取り扱う旅行会社でしか使えないので、ゼロから始めるという方であれば、総合旅行業務取扱管理者の取得を目指した方がいいでしょう。
このブログは、「総合旅行業務取扱管理者研修 」についての記事となるので、「総合旅行業務取扱管理者」の資格そのものに関する説明はこのくらいにしておきます。
本試験の合格率
総合旅行業務取扱管理者は、3科目から構成されています。
- 業法(100点満点 )・約款(100点満点 )
- 国内旅行実務(100点満点 )
- 海外旅行実務 (200点満点 )
各科目の合格基準は、60%以上となり、3科目全て合格した場合、「総合旅行業務取扱管理者」合格となります。
そして、「国内旅行実務」「海外旅行実務」に関しては合格した翌年迄有効となり、翌年は合格した科目の受験が免除されます。
業法・約款に関しては、例え合格していても、毎年受験する必要があります。
▼例
2020年の試験で、「業法・約款」と「国内旅行実務」が受かったが、「海外旅行実務」は不合格だった。
→2021年は、「業法・約款」と「海外旅行実務」の受験だけでOK。
(※但し、2021年の試験を受けなかったり、この年も不合格だった場合は、翌年は再度全科目受験が必要となる。)
受験方法は、いくつかあり、全科目受験から、一部科目免除まであり、各合格率の一部を紹介します。
《2019年実施分》
- 受験区分A ...受験科目「業法・約款・国内旅行実務・海外旅行実務 」
→13.0% - 受験区分B ...受験科目「業法・約款・海外旅行実務 」
→13.1% - 受験区分C ...受験科目「業法・約款・国内旅行実務」
→27.1% - 受験区分D ...受験科目「業法・約款」
→71.9%
見ての通り、全科目受験の合格率が最も低く13.0%、そして、「業法・約款」のみの場合は71.9% に迄上がっています。
※年により大きく異なります。詳細は公式サイトをご確認下さい。
そしてこの「業法・約款」のみの受験でOKなのが、前年度に「海外と国内」の合格者と、次に紹介する「総合旅行業務取扱管理者研修 」の修了者となります。
【概要】「総合旅行業務取扱管理者研修 」について
合格率が非常に高くなり、資格取得に是非利用したいこの研修ですが、受講には制限があります。
受講資格
研修を受講する年の4月1日時点で、旅行業者又は旅行業代理業者に所属していること。
尚且つ研修を受講する年の4月1日から起算して、直近5年以内に3年以上、海外旅行を取り扱う業務に従事したことがあること。
※旅行サービス手配業者に所属している人は受講不可。
研修科目
▼1日目
09:30~ 13:00 国内旅行実務 (運送・宿泊機関等の利用 料金/その他旅行業務 に関する実務)
14:00~ 17:00 旅行業法及びこれに 基づく命令
▼2日目
09:30~ 16:30 旅行業約款、運送約款 及び宿泊約款
▼3日目
09:30~ 12:30 海外旅行実務 (運送機関等の利用料金)
13:30~ 17:00 海外旅行実務 (旅券・CIQ 等法令/出入 国手続に関する実務/ その他旅行業務に関す る実務)
▼4日目
09:30~ 12:30 海外旅行実務 (旅行業務に必要な語学)
13:30~ 16:30 海外旅行実務 (主要国の観光)
※「旅行業法」「旅行業約款」は受講必須となります。
※「国内旅行実務」「海外旅行実務」は前年度に、試験または研修に合格している場合は、受講免除となります。
研修会場
札幌・仙台・埼玉・東京(10箇所)・横浜・名古屋(2箇所)・大阪(3箇所)・広島・高松・福岡(2箇所)・那覇
研修日
5月中旬~6月上旬の4日間
修了テスト
修了テストの受験資格
受講すべき研修を全科目受験、受講すること。
※1科目でも、遅刻、欠席、早退をした場合、終了テストを受けることは出来ません。
※毎朝、来場の確認が実施され、全科目終了時に、修了テスト受験票が渡されます。
実施日
2021年6月27日(日)
(毎年同じくらいの日程です。)
実施都市
札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・那覇
試験時間
- 2科目受験:『国内旅行実務』 『海外旅行実務』 13:00 ~ 15:00 (120 分)
- 1科目受験:『国内旅行実務』 13:00 ~ 13:40 (40 分)
- 1科目受験:『海外旅行実務』 13:00 ~ 14:20 (80 分)
試験方法
マークシート方式
※問題用紙を持ち帰ることは出来ず、万が一持ち帰った場合は失格となる。
合格基準
基準点や問題の正誤等については、発表されていませんが、70%前後ではないかと思います。
結果発表
2020年7月8日(水)(予定)
所属会社の代表者宛、「修了証書 」が送付されます。
修了証書の有効期限は、受講した年を含めて2年間となります。
▼例1
2020年5月の研修(7月テスト)に全科目合格した場合
2020年10月の国家試験で、「海外旅行実務」と「国内旅行実務」の受験免除
2021年10月の国家試験で、「海外旅行実務」と「国内旅行実務」の受験免除
▼例2
2020年5月の研修(7月テスト)に「海外旅行実務」のみ合格した場合
2020年10月の国家試験で、「海外旅行実務」の受験免除
2021年10月の国家試験で、「海外旅行実務」の受験免除
その為、修了テストに合格した人は、その年か遅くても翌年のテストで受からないと、またゼロからのスタートとなってしまいます。
出題範囲
規約上、詳しくは書くことは出来ませんが、各科目の授業をしっかりと受けて、メモを取るようにすれば、出題範囲を把握することは問題ありません。
出題範囲は、毎年同じ範囲から出題されているように思います。問題の構成や出る内容は勿論毎年変わりますが、このテキストの「○○~○○までが出題範囲です。」という範囲は変わらないように思います。
【解説】修了テストの難易度
修了テストの難易度ですが、開催される年度によって難易度が異なることや、受講生の基礎知識の量による得意不得意により差はありますが、予想以上に難しいと思っておいたほうがいいでしょう。
前述の通り研修をしっかりと受けていれば、出題範囲を把握することは問題ありませんが、逆に研修中に居眠りしてメモを取らなかった場合や、テキストを忘れた場合は、修了テストに合格することは不可能であると言えます。
国内旅行業実務
観光名所&温泉
本試験では覚えるべき量は絶望的な多さとなるが、研修の場合出題範囲はそこまで多くはないので、指示された範囲を確実に覚えておけば、さほど問題はない。出題形式もそこまで捻った出され方はない。
対策をしっかりと行えば、満点も不可能ではない。
学習期間は最初に一気に覚えて、試験直前に再度やり直して復習した。
JR運賃
個人的に最も苦労した試験科目。基本から応用、暗記的な要素まであり、幅広い理解が求められる。
出来るだけ最初から取り組み、苦手意識を作らないことが重要。直前の丸暗記は不可能な科目となるので、毎日取り組んでおく必要がある。
修了テストもそれなりに掘り下げた問題が出されているように感じた。
国内航空券
基本的な知識を頭に入れておくことは勿論重要だが、国内航空券、JR運賃、海外航空券の3種類で、異なる部分(年齢制限・発売開始時期など)をしっかり理解しておくことが重要。
同じ航空券の分野としては、海外航空券よりは難易度は低いという印象を受けた。
バス・ホテル
基本的なポイントを抑えておけば、さほど大きな問題とはならない。毎日の余った時間に取り組めば十分対応可能。
但し、JR運賃等で点数を稼ぐ自信がない場合は、バスやホテルが0点とならないようにしておく方が良いだろう。
海外旅行実務
観光名所
こちらも国内同様に本試験では覚えるべき量は絶望的な多さとなるが、修了テストの場合、研修で出題範囲は指示されるので範囲の把握は問題ないが、国内に比べると出題範囲はそれなりに多い。
尚且つ、テストでの出題形式も少し捻った出され方が多い印象があるので、「○○=イタリア」という様な単発的な暗記では対応出来ない問題が多く、しっかりと細かい所まで含めてしっかりと覚えておかなければならない。
出題数も多いので、確実に覚えておけば点数稼ぎになるので、後述する「海外航空券」でつまずいた場合も、観光名所で稼いでおけば合格に繋がるので、毎日しっかりと取り組んでおきたい科目。
海外航空券
個人的に海外旅行実務の中で最も難しい科目であった。知識を理解しておくことは前提として必要だが、
問題文と付属の資料をしっかりと見て、「この問題では何が問われているのか」を理解しないと”見落とし”が起こり、不正解となってしまう。
短い試験時間ではじっくり見ている時間はないので、瞬時に理解することが求められるので、試験と同じ方法で練習しておく必要がある。
ちなみに、修了テストの問題はかなり難しい印象で、研修で使うテキストに載っていた「練習問題」よりも遥かに難しかった。海外航空券に関しては「本試験の過去問」も利用して対策しておく方がいいかもしれない。
英語
こちらも、出題範囲は研修中に把握することが出来る。テスト対策に関しても説明がされるので、英語の勉強というよりは対策が肝心となる。(対策方法に関しては講師の説明をしっかりと聞くこと。)
当日のテストでは思いのほか細かい問題が出てくるので、観光地(海外)と同様にしっかりと覚えていないと、対応出来ないことがあるので、試験対策には十分な時間を割り当てておかなければならない。
旅券・CIQ等法令/出入国手続
こちらも、出題範囲は研修中に把握することが出来る。簡単そうで案外覚えるべき内容が多いのがこの科目の特徴。
難しくはないが、確実に覚えていないと解けないことが多い。
これは個人的な印象だが、数字を覚えるような問題よりも、基本的な内容を問うような問題の方が多いように感じたので、基礎的な部分を確実に覚えて、余った時間でそれ以外の範囲に取り組む方がいいかもしれない。
時差・3コード
時差に関しては、”計算方法・国や都市の3コード・都市の場所”などをセットで問われることが多く、計算方法を必死に練習してきても、3コードが分からなかったり、その都市がどの地域に属しているのか分からなければ解けない問題が多い。
また、3コードも事前の試験対策で暗記することも出来るが、試験対策よりは基礎知識が大きく作用する科目である。
試験対策の割り振り
国内旅行実務
観光名所:出来るだけ高得点を目指し、ここで点数を稼ぐ。
JR運賃:解けない問題の数を減らすことを目指す。
国内航空券:対策をすれば解ける問題が多いので、ここも点数を稼げる科目。
バス・ホテル:JR運賃で点数が下がることを考慮して、出題が少ない分、この科目も満点を目指す。
海外旅行実務
観光名所:出来るだけ高得点を目指し、ここで点数を稼ぐ。
航空券:全問正解よりも、1~2問の正解を目指す。
英語:対策次第で高得点が目指せるので、ここで点数を稼ぐ。
旅券・CIQ等法令/出入国手続:対策次第で高得点が目指せるので、ここで点数を稼ぐ。
時差・3コード:知っている都市が出ればラッキーくらいのでつもりで挑む。
当日の試験中
試験時間は予想以上にギリギリとなることが多いので、自分が得意としている問題から取り組んだ方がいいだろう。
JR運賃や海外航空券など、時間のかかる問題は一番最後に回し、得意な問題や時間のかからない問題を最初に取り組むようにした。
「国内旅行実務」の解く順番(私の場合)
- 観光名所
- バス・ホテル
- 国内航空券
- JR運賃
「海外旅行実務」の解く順番(私の場合)
- 観光名所:出来るだけ高得点を目指し、ここで点数を稼ぐ。
- 旅券・CIQ等法令/出入国手続
- 英語
- 時差・3コード
- 航空券
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「総合旅行業務取扱管理者」は旅行業界の国家資格というだけあって、求められる知識量も多く、本試験だけでの合格は非常に難しいものがあるでしょう。
旅行業界に属する者だけが受けることが出来る「管理者研修」を使えば、合格への近道となるので、条件を満たすのであれば、使わない手はないでしょう。
しかし、研修とはいえ、覚えなければいけない量も多いので、出題範囲をしっかりと把握し、確実に頭に叩き込み、理解しておく必要があります。
決して形式的な研修ではないということを、念頭においておかなければいけません。