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【解説】中国の未開放地区と情勢不安定な地域について

中国には「未開放地区」と呼ばれる地域があり、それらの地域は外国人は立ち入ることが出来ません。

「未開放地区」とはなんなのか。説明していきたいと思います。

※この記事で使用している写真はイメージであり、実際に未開放地区で撮影したものではありません。

【解説】中国の未開放地区と情勢不安定な地域について

「未開放地区」とは?

カナス湖トワ人村3

現代では、中国は日本人は勿論、世界的に見ても人気の観光国でもあります。

しかし、中国の全ての場所に自由に出入りできるわけではなく、一部の町や地域は外国人の立ち入りが制限されている立入禁止区域がり、そこを「未開放地区(非開放地区)」と呼んでいます。

実は

国交正常化した直後の1972年頃の中国は外国人の立ち入りが可能なエリアは極僅かで、その後1985年に外国人の立ち入りが可能な開放地区が244の地域まで増大しました。そして現在では、未開放地区は中国全体の僅か8%のみと言われています。

では、「開放地区」はどこなのか?というこですが、これは公には公表されておらず、情報の入手は非常に困難です。

よくある場所としては、軍事(政府)施設の近辺、国境付近、宗教・民族的に不安定な地域に多くあります。一番分かりやすい例は「チベット自治区」ですが、新疆ウイグル自治区や四川省のチベット自治州にも多くの未開放地区があります。(どちらかというと増えている)

【事前に確認する方法】

  • インターネットで情報取集する

    実際に行った人の旅行記で確認できますが、現地の情勢は刻々と変化する為、最新の情報は「実際に行って初めて分かる」というケースが多いです。

  • 現地の旅行会社に問い合わせる

    最新の情報は中国現地の旅行会社に問い合わせるのが、事前に情勢を入手するという点では最も信憑性が高いです。しかし、多くの場合「ガイド同伴の場合のみ通行証を発行可能」となるケースが多いです。旅行会社としても責任問題になることは避けたい為、無難な対応を取ったり、商売に繋げたいなど色々とあると思いますが、こちらもケースバイケースとなるでしょう。

 

そして、注意しなければならないのが、軍事施設や政府施設の中には鉄道の橋梁、ダム、病院(軍管轄)、退役軍人の住宅や別荘も含まれる場合があり、旅行者には見分けがつかない場合があります。

 

日本で販売されている旅行ガイドブックに載っているような有名な観光地のみを訪れる分には問題ありませんが、秘境・辺境の地・国境付近・少数民族が多く居住している地域などを訪れる際には注意が必要です。

 

未開放地区に入る方法

未開放地区は、許可を取れば入れる所と、絶対入れない所の2種類があります。

▼許可を取れば入れる場合

未開放地区に入る為には、「通行証」か「旅行証」が必要となります。(※呼び方は地域により異なりますが、意味するものは同じです。)

取得方法は、その地域を管轄する公安局で申請するか、旅行会社を通じて申請します。

個人での申請が可能か、それとも旅行会社を通じて取得しなければならないかは、地域により異なります。自由旅行を許さない地域の場合は、旅行会社経由でガイド同伴が必須となる場合もあります。

所要日数は、多くの場合で翌日以降となるので日数に余裕がなければいけません。

チベット自治区

チベット自治区の入境証の入手条件は「ツアーに参加する」または「ガイドを同伴させる」こととなっており、完全な個人旅行は認められていません。ツアーやガイドが監視役を担っていると言われています。

 

▼絶対に入れない場合

公安局や旅行会社に問い合わせをしても「不可」となった場合は、残念ですが外国人の立ち入りは不可能となります。

昔はトラックの運転手に頼み込んでお忍び旅行なども可能だったようですが、現在は取り締まりや検問が非常に多く、昨今のスパイ問題もありますので、絶対に密行などはしないようにしましょう。

 

開放地区の具体的な場所「例えばどこ?」

私が実際に直接確認した「非開放地区」を少し、紹介していきます。

※一部はネット上で収集した情報も含まれています。

新疆ウイグル自治区

白哈巴村(2011年確認)

白哈巴村は、新疆ウイグル自治区 北部のアルタイ地方にある村で、カザフスタンとの国境線上に位置しており、近くにはカナス湖もあります。白哈巴村はトワ人が住む昔ながらの村が残っており、美しい自然が広がっていますが、残念ながら未開放地区の為、外国人の立ち入りは出来ません。

カナス湖の近くにある「禾木村」でも同じような風景を楽しむ事ができますが、こちらは外国人の立ち入りも可能です。

尉犁県(2019年確認)

尉犁県は、新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州にある県で、ロプノール県と表記される場合もあります。

タクラマカン砂漠の東北部に位置するこの町には、ロプノール人村(罗布人村赛)があり、ここでは砂漠に住むロプノール人の住居跡や、タリム河を見ることができます。

この時の旅行記はこちら
【2019年】新疆ウイグル自治区・旅行記≪コルラ:罗布人村赛(ロプノール人村)、ボステン湖》

 

 

タシュクルガン(2019年確認)

タシュクルガンは、新疆ウイグル自治区の最西端の町カシュガルから更に西にある町で、パキスタンとの国境に程近いことで、バックパッカーにも有名な町です。

私が訪れた2011年の時点で、既に警備が非常に厳しく、カシュガル~タシュクルガンの間には検問所が複数設置されており、通行する者全員の身分証チェックが行われていました。(※2011年当時は、新疆全域でもこれほの厳しい規制はありませんでした。)

しかし、2019年時点で、タシュクルガン近郊は「非開放地区"相当"」の扱いを受けており、入るためには「通行証」や、その先の「パキスタンのビザ」を有していることが入域の条件となっているようです。

 

可可託海鎮(2020年確認)

こちらは、新疆ウイグル自治区のアルタイ地方の富蕴県にあり、「コクトカイ国家地質公園」として、自然豊かは風景区が広がっています。

モンゴルとの国境付近ということもあり、準非開放地区の為、”入境証・通行証”を取得しガイドと同伴であれば観光可能となっています。

 

ニヤ遺跡(昔から)

中国新疆ウイグル自治区ニヤ県にある古代都市の跡地。

タクラマカン砂漠の南端にあり、最寄の町のニヤから砂漠に対応した車で125kmほど行く必要がある為、個人が容易に到達できる所ではありませんが、、、。入る為には「入境証・通行証」の取得及びガイドの同伴が必要となります。

 

ロプノール(昔から)

新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州チャルクリク県からアプローチするかつての塩湖。

こちらもタクラマカン砂漠の北東部に位置する為、個人が容易に到達できる所ではありませんが、、、。入る為には”入境証・通行証”の取得及びガイドの同伴が必要となります。

 

四川省のチベット文化圏

四川省のチベット族自治州にあるラルンガルゴンパ(色达喇荣五明佛学院)とアチェンガルゴンパ(亜青寺)は現在外国人の立ち入りが制限されているようです。(※こちらはネット情報)

尚、最寄の町である甘孜も近いうちに「非開放地区」になる可能性があると言われています。

未開放地区の注意点

非開放地区は、急に入れなくなる。

非開放地区となる所は、もともと以下の様なところが特徴的です。

  • 民族問題で情勢が不安定な所
  • 農村など近代の発展から取り残された所
  • 国境付近
  • 辺境地域

これらの場所はある日突然入れなくなることがあります。

体験談

尉犁県でのパターン

実際に私も2019年に"新疆ウイグル自治区の 尉犁県"に行こうと思った際に、事前に日本人が行った記録を見て確認していたのですが、

当日、最寄りの都市のコルラから 尉犁県行きのバスへの乗車後、バスターミナルからの出庫時に公安により降車を求められ、非開放地区である旨の説明を受け、あえなく旅行中止となりました。

 

今後、非開放地区は増えていく可能性が大きい

非開放地区の特徴と、近年の中国政府の色々な政策による社会問題を鑑みると、今後非開放地区は増えて行くのでないかと予想されます。

「甘孜」や「尉犁県」「タシュクルガン」などが例にあげられます。

 

非開放地区は、情報制限がかかる

自身が2011年に甘粛省のチベット文化圏を旅行していた際に、数日に渡り全域で国際電話が使用出来ない日がありました。

後日調べたところ、同日にチベット僧侶による抗議活動が行われていたようです。因果関係や使えなかった原因は定かでは有りませんが、単なる偶然とは思えません。

 

ガイドブックの情報が全てではない「逆のパターン」

カナス湖臥龍湾、月亮湾2

新疆ウイグル自治区のアルタイ地区の「カナス湖」は、2010年発行の「地球の歩き方」ではカナス湖があるアルタイ地区は「非開放地区」であり、本風景区に訪れるには旅行証が必要となっていましたが、実際には全てが非開放地区という訳ではありません。実際に2011年と2019年にカナス湖に行きましたが、問題なく入ることが出来ました。

 

まとめ

非開放地区となる所は、自然が美しく、歴史的建造物や美しい自然が残っていたり、観光としては非常に素晴らしいところが多いと思います。また旅行の玄人やバックパッカー等はこういった所にこそ魅力を感じると思います。それだけに残念です。

しかし、こういった微妙な方面に行く際は、中国という国柄、いつ何時立ち入りが制限されるか分からないので、起こりうる問題を視野に入れ、柔軟な対応が出来るようにプランを経てておくと良いでしょう。

間違っても、違法な手段で立ち入りを試みたりしないようにしましょう。

日中国交正常化直後などは、今とは比べられない程多くの「非開放地区」がありましたが、それに比べると今はかなり少なくなってます。中国の発展と供に減ったはずの「非開放地区」が、近年再度増え始めるというのは、寂しさを覚えてしまいます。

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