新疆ウイグル自治区には2011年と2019年に2回訪れましたが、この8年の間に新疆は大きく変わっていました。では、何が変わったのかを綴っていきたいと思います。
悪い変化
政府の監視が強化された
もうこれが最も大きな変化だと言えるでしょう。1回目の2011年も既に政府による監視や取り締まりはありましたが、現在程ではありませんでした。
検問(町~町の移動の際)
新疆ウイグル自治区では町から町に移動する際は、随所で検問があるのですが、2011年時点では移動中に約1回程、公安がバスに乗ってきて中国人のみ身分証の確認を行う程度でしたが、
2019年現在は、道中約2~3回、乗客全員がバスから降りて、身分証の確認を行う必要があり、外国人は中国居民身分証が無い為、より一層時間がかかります。
身分証の提示(町の中)
2011年は、鉄道やバスターミナルへの入場時ぐらいだった身分証の提示が、2019年現在は、町の粗あらゆる施設への入場時に毎回身分証の提示が必要になります。平均1日10回以上は必要だと思った方がいいでしょう。
監視カメラ
2011年には人通りの多いところで見かける程度でしたが、2019年現在、驚く程の監視カメラが設置されています。また、新疆全土で以上の程の中国国旗が各家、各店に掲げられています。
公安
2019年現在、公安派出所の数が尋常ではなく、水や雑貨を売っている商店を探すよりも簡単に見つかります。
ウイグルの文化が減り、漢族の文化が増えた
2011年時点では書店に行けばウイグルの歴史書やウイグル語の書籍等が多数売られていましたが、2019年現在、粗売っていません。
ドッパの専門店や、ウイグル料理の飲食店の数も減っているように思います。
大型スーパーでも特産品等の取り扱いが激減し、漢族の文化品ばかりが並んでいます。
年々、漢族の流入が増えている背景が影響しているのでしょうか。
観光地が進んだ
2011年時点でも新疆は観光地として有名で多くの観光客が訪れていました。しかし、他の中国の観光地に比べると整備が進んでおらず、不便な面もありましたが、それが逆に本来の魅力を際立たせていました。
2019年現在、新疆のほとんどの観光地は訪れる大量の観光客に対応する為に、新しい設備や建物が建設され、昔ながらの風情や情緒は失われているように感じました。
具体的な例を出して見ていきましょう。
高昌古城を走る区間車
2011年の高昌古城の入り口は風景区の北側にあり、駐車場もなく小さな切符売り場があるだけで、あるとすれば古城内を走るロバ車くらいでした。
2019年には、大量の観光客に対応する為、入り口は風景区の南側に変わり、大きな駐車場も完備され、入り口には資料館も併設されています。古城内にはレンガの道が出来ており、そこを区間車が観光客を乗せて走っています。
星空の消えたカナス湖
”星空が消えた”というと語弊がありますが、2011年はカナス湖内にあるロッジの周辺には街灯等は殆ど無く、夜部屋を出れば漆黒の闇。しかし、上を見れば、そこには想像を超える満点の星空が広がっていました。
2019年には、ロッジ周辺に限らず風景区内には多くの街灯が完備されており、折角の星空が霞んでしまい、ロッジの周辺での星空観賞は不可能です。(日が沈んでから湖の傍まで行けば星空も見えるかもしれませんが、、、、)
地形すら変わってしまった、ピチャンの砂漠公園
これは2011年のピチャンの砂漠公園の写真です。大きな砂丘は目の前に幾つも並んでいます。
これは2019年のピチャンの砂漠公園の写真です。明らかに砂丘の一つ一つが小さくなっています。大量の観光用のバギー等が走り続けた結果でしょう。
観光客の数も全く違います。2011年の7月に見かけて観光客は精々10人程、2019年の5月は砂丘の上は何百人もの観光客で賑わっており、まるでビーチのようでした。
夜市が減っている
新疆の楽しみの一つに”夜市での夕食”があります。以前は各地で夜市が開かれ、夕食時は賑わいを見せていましたが、2019年時点では開催も少なく殆ど見かけることはありませんでした。
ウルムチでは2019年に以下所で数年ぶりに夜市が再開されたそうです。
開催がされない原因として政府の意向らしいですが、定かではありません。
新疆でも電子マネーが主流に
これは、外国人だから不便な点となりますが、現在中国ではWeChatPay(微信支付)が非常に広く普及しており、新疆ウイグル自治区でも同様で、タクシー代の支払いから、WeChatPayしか対応していない屋台もあったりします。
良かった変化
モラルの向上
これは新疆に限らず中国全体に感じることですが、全体的なモラルの向上によるものか、
以前の中国では「淡を吐く」「ゴミを捨てる」「割り込む」「ぼったくる」という状況が頻発していましたが、最近の中国では少なくなっているように感じます。
また、些細なことで、中国の人から「謝謝」と言われることが多くなりました。
鉄道の切符がネットで買えるようになった。
2011年の頃はまだネットでの鉄道切符の購入は一般的ではありませんでした。
近年のネットの普及で、日本にいながら鉄道の予約が可能となったので、旅の幅が大きく広がりました。これは、非常に便利な変化です。
まとめ
今から30年程の前の1980年後半は、鉄道はウルムチまでしか出ておらず、ウルムチ駅を降りると目の前にはレンガ造りの家が並んでいるだけだったと知人から聞いたことがあります。
その時代の新疆ウイグル自治区を見てみたかったと思っていますが、時代の流れと共に昔ながらの佇まいや趣が失われていくことは、ある程度仕方がないのかもしれません
現在の方が旅行が便利になったのも事実ですが、昔の方が"新彊らしさ"、旅をしていると実感させてくれる場面が多かったと思います。
同時に新彊では政府の取り締まりが増すばかりで、常に窮屈な場面が増えていますが、出来る限りその地の良さを残していって欲しいと願っています。